年明けの明野処分場問題の経過

 昨年末から、明野処分場の運営再開に対する住民の抗議が続いている。みどり・山梨の会員、サポーターも
何度となくこの抗議に参加してきた。
 この抗議は、一昨年の10月に同処分場の漏水検知システムが漏水の危険を知らせる異常値を示したことに
ついて、その原因究明が不完全なまま、運営が再開されようとしていることに向けられている。
 昨年秋に、安全管理委員会では、事業団の模擬実験の結果をもとに仮説を立て、”漏水はない、安全は確認
された”という推察をまとめた。しかし、この推察については、住民代表及び坂野斎山梨大助教らが、再三異議
申し立てを行い、異なる見解を示してきた。
 今回の運営再開は、この異議申し立てと異なる意見に対して十分に解答しないまま、強行されようとしている。
 つまり、事故原因に対する二つの相反する意見がありながら、結論に至らないまま、議論を打ち切ってしまっ
たのだ。住民たちはこのことに怒り、抗議している。
 l現在、県環境整備事業団は抗議を続ける住民に対して、「廃棄物搬入妨害禁止等仮処分命令」を甲府地裁
に申し立てているが、抗議する住民たちの真意は搬入の妨害にあるのではない、事故原因の真摯な究明にあ
るのだ。

◆昨年11月17日の安全管理委員会
 T電気の模擬実験装置を使った実験からの推察として、「漏水はなかった、安全性については多くの委員から
理解が得られた」とまとめ、議論を打ち切った。しかし、2名の委員による強い疑義あり。この疑義を支えるものと
して、この前後に、2度にわたり坂野助教jから、この実験は現実的でない、間違いである、という意見書が提出
されている。そして、この意見書については十分に審議せず。

◆昨年12月16日、明野処分場で搬入再開と抗議集会
 安全管理委員会のまとめを受けて、処分場の運営が再開。廃棄物搬入の再開に対して、住民は抗議集会を
開く。廃棄物の搬入は不出来。詳細は当HPの12月25日のレポート(明野処分場の搬入再開で抗議集会)

◆昨年12月27日の話し合い
 対策協(住民側)と横内県知事(県環境整備事業団)による再開をめぐる話し合いがおこなわれた。その際、
対策協は原因究明の継続と搬入再開前の住民への説明会の開催等を申し入れる。

◆1月4日 テント村開き〜対策協代表のあいさつ
 対策協を中心とした住民は明野処分場前で年頭の集会を開く。



                       
 

◆1月7日 年末の申し入れに対する回答
 1月4日の話し合いのときに対策協が申し入れたことについて、県知事から文書で回答が為された。
 その内容は、原因究明については既にされている、住民との意思疎通も十分に図ってきた、安全性につい
ても十分に配慮している、という趣旨で、対策協としては到底納得できるものではないだろう。
 この昨年末の申し入れと回答についての詳細な経緯→→「対策協だより第71号」。

◆1月10日 搬入再開に対する抗議集会
 昨年末に続き、年明けの10日、再び搬入がおこなわれようとした。住民側も同処分場前で再度の抗議集会。
小競り合い等緊張する場面もあり。またも搬入はできなかった。

◆1月16日 県環境整備事業団は、住民を相手取り、甲府地裁に仮処分を申し立てる
 県環境整備事業団は地元住民の抗議行動を、廃棄物搬入の妨害行為とみなし、その禁止を求める「廃棄物
搬入妨害禁止等仮処分命令」を甲府地裁に申し立てた。事業団は対策協(明野廃棄物最終処分場問題対策
協議会)の篠原出代表ら12人を妨害行為を先導した当事者としている。

◆2月2日 甲府地裁で仮処分申し立ての審尋
 県事業団が申し立てた仮処分の審尋が甲府地裁でおこなわれた。審尋とは裁判所での当事者の陳述の機
会のこと。代理人として住民12人の反論を陳述した梶山正三弁護士は、審尋終了後、明野の総合会館でその
報告をおこなった。
 予想していたことではあるが、審尋の論点は処分場の”安全性”ではなく、”妨害行為”があったかどうかに絞
り、審議されていたようである。だが、住民の正門前でのプラカードを掲げた抗議集会が妨害行為であろうとな
かろうと、同処分場の事故原因の究明と安全性については未だに重大な疑義が残ったままなのだ。
 なお、今月下旬に地裁の最終判断がでるそうである。
 また、この裁判について、「明野処分場裁判を支える会」が発足しました。ご協力を。
                                →→「明野処分場裁判を支える会」からご寄付のお願い

◆それにしても、なにか腑に落ちない。なぜ、処分場シート下・周囲の土壌を調べないのか、あるいはすでに調
べてあるにもかかわらず、その数値が公表されないのだろうか。もし漏水があったなら、たとえ微量でも、もとも
とそこには無いはずの有害な物質が検出されるはずだ、と考えてしまう。なにしろ産業廃棄物の最終処分場な
のだ、ここは。検知システムの作動について論じるよりも、論より証拠、である。なにか科学がもたらす専門性
のワナにはまりそうだ。
                                               (以上 みどり・山梨 赤荻記)